新社長就任の情報が入った!
重要な取引先であるABC社の部長から―
「私の上司が、次の社長になることに決まったようです」ということを耳にした営業課長のEさんは上機嫌だった。
新たにABC社の社長になるその人には、日ごろから良くしてもらっていたこともあり、まるで自分のことのように喜ばしいことだった。
自分も一役買いたくなった
「社長就任と言えば胡蝶蘭!」と、新社長就任を祝ってエントランスロビーにずらりと胡蝶蘭が並ぶ絵が、Eさんの頭に浮かぶのだった。
「この件は、他人任せにせず、自分で胡蝶蘭を選んで注文しよう!」
今後のことを考えると、少しでもお祝いに一役買いたくなったEさんは、胡蝶蘭の注文に乗り出した。
意外にもわからないことが多くて不安
大事なお取引先の社長就任なのだから、予算の範囲で最大限の胡蝶蘭にする、というあたりまでは良かったのだが―
「もう送ってもいいのだろうか?」と、ひとたび疑問がわくと、「正式な就任はいつ?」「今の社長はどうなる?」など、次々と芋づる式に疑問がわいてきてしまった。
経験のある人に頼むのが一番
「それだったら、秘書課のYさんが詳しいですよ」と、部下に言われたEさん。
その言葉通り、秘書課のYさんに尋ねてみると、「新社長就任お祝いの胡蝶蘭ですね。それでしたら・・・」と、立て板に水のごとく、メモをとる間もなく、Yさんからすらすらと手順や注意事項が話された。
やっぱり慣れた人に任せるのが賢明だと感じたEさんは「頼んでもいい?」と。
「もちろんです。それが秘書課の仕事ですから」とYさんから言われ、そうすることにした。
どうすれば良かったのか?
胡蝶蘭の品質、値段、立札に気を配ることは、胡蝶蘭を贈る際の共通事項です。
それに加え、特に、社長就任に際しては配慮しておきたいことがあります。
(1)前任の社長はどうなるのか
避けたいのは、前任者を蔑ろにしたような対応です。
例えば、まだ交代してもいないのに、新社長就任の胡蝶蘭が、交代前の社長に届くのは大変失礼なことです。
また、前任社長が会長になる場合、新社長と合わせて2つの胡蝶蘭を贈ることが多々あります。
(2)新社長就任の正式発表はいつなのか
社長就任は、株主など幾つかの承認を経て決まることが多いので、間違ってもうわさだけの未確定情報で動かないようにしましょう。
遅れをとらないことにも気を付けたいですが、内々の情報を鵜呑みにして、それが撤回された場合、大恥をかくだけではなく、関係性までもヒビが入りかねません。
(3)過去の実績はないか
対象とするお相手だけではなく、他も含めて、これまでも胡蝶蘭などをお祝いに贈っているとすれば、その御祝の大きさとのバランスにも配慮したいものです。
言われれば、当然のことばかりだと思われるでしょう。「わかっていることばかり」と嘲笑していただければ、それで構いません。
ただ、気づかぬまま配慮に欠ける対応は、大切な関係に汚点を残しかねません。せっかくのお祝いの胡蝶蘭がそのようなことにならないよう願います。
やはり、上記の事例のEさんのように、はやる気持ちはあっても、慣れた人がいれば、おまかせするのが良いと言えます。